出産直後の管理
ふぅ~。子供たちも無事生まれたことだし、ご飯をいっぱい食べていっぱいお乳を作らなきゃ。
出産直後は母犬はぐったり。子犬はお乳をゴクゴクと。
ここでも重要なことがあるので一緒に勉強しよう。
出産後の管理方法
母犬の管理
出産を終えると母犬は子育てという大仕事があります。
始めの2~3日は食事も排泄もがまんして子犬の傍から離れようとしないこともあります。
食事は産室の中に持って行ってやり、排泄はいつもの慣れた所に連れて行ってやります。
母犬は子犬の所へすぐに戻りたがりますが、排泄が終わったらすぐに戻ってきて子犬に何も無かったことを教えてやればその後はちゃんと世話します。
母乳が出ている間は、水分を多めに与えなければなりません。
栄養的にも【妊娠中の管理】の妊娠後期と同じように、栄養価の高いフード、ミルク、卵黄、タンパク質などを多く与えます。
胎児を包んでいた羊膜や胎盤を食べたために出産翌日からは2~3日は黒色の下痢をしますので、食事は少なめなものを回数を増やして与えるようにします。
出産頭数が多く、胞衣等を全部食べてしまったりすると1週間も下痢が続いて体力の消耗につながることがあるので下痢が止まらないときは早めに整腸剤か動物病院で治してやります。
下痢が収まると食事の量も妊娠後期の量を与えます。
出産に時期はない
犬の妊娠出産は春秋とは限らず通年いつでもあり得ます。たとえ厳寒期にあっても保温対策はしやすいので子育てに支障の出ることは少ないのですが、 小型犬ならともかく、中型・大型になると反面に夏期の酷暑にあたると北海道など一部の冷涼地を除いて対応が大変です。母犬の妊娠期間中では運動不足になります。子犬が歩き始める頃が梅雨時にかかるのも管理面で不便なことも多いもので、出来得れば避けた方が良いでしょう。そして母犬の体調や外見が完璧になるには、出産からは4ヶ月かかります。
母犬の健康問題
出産に続く健康上の問題もかかえています。
出産後、局部からのおりものも15日から1ヶ月位までに続くことがあります。
場合によっては、ブドウ球菌、 連鎖球菌などによる感染症を起こしていることもあるので発熱があったり、おりものが膿様であったりと外陰部から出てくる汚れに気をつけて清潔を保つようにしてやります。
無理な助産で膣等を傷めてしまうと出血や下り物が多くなることがありますが、心配いりません。
期間(1ヶ月)が長かったり、 悪臭がある時は早めの獣医への対応が必要です。
母乳の確認
子犬が乳を飲んでいる時の様子を見ると乳の出具合が分かります。
十分な量の乳が出ている時には小さな耳がリズミカルにピクピク動き、可愛い尻尾を小刻みに振りながら乳首に吸い付いています。
一方、乳の出が良くない時は子犬が前足で乳房を揉むようにする動作が見られます。
そんな時は乳房をつまむと勢いよく母乳が出るか確認します。
乳があまり出ていないような様子が見られたら母犬に水分を与えてみたり、他の乳首を吸わせてみたりして様子を見ます。
どうしても乳の出が良くない場合には人工哺乳を考えなくてはなりません。
子犬の数が1~2頭と少ないときには、母犬に乳房炎の心配もありますので乳房の柔らかさや温度を一日1回確認して乳腺炎にならないように注意しましょう。
乳腺炎になりかかってくると乳房が大きくなり硬くしこってきて乳房そのものに熱感が見られるようになります。
犬の乳腺炎
赤くはれて硬くなっている
絞ると膿が出る
その場合には40度位のお湯でタオルを絞り温シップをしてそっとマッサージして溜まっている乳汁を優しく絞りだしてやります。
上手くいかない時や痒痛を伴う時には、動物病院で抗生剤などの処置、その後のことなど相談してください。
そして膿を決して子犬に飲まさないでください。
子犬の成長記録
子犬は産湯に浸かり、被毛の水分をよく拭きとってやった後、見分けがつくように番号札首輪を装着して体重を測定し記録をしておきます。
以後発育に従って、適宜体重測定をしますが毎日測る人、1週間おきに測る人いろいろです。
子犬がみんな無事ならすべての子犬の成長記録を付ける観察ノートを用意します。
毎日の発育具合を記録してゆく日誌ですが、繁殖にあたって子犬の育っていく記録を是非取っておかれることをお奨めします。
出生直後に子犬の体重、性別、毛色、模様の特徴などを記録
- 出生順に番号をつけ、出生時の体重を基本にする。
- 従って、この日誌用紙は出生後、各犬の体重を測ってから作ることになる。
- 用紙は1日1枚なので、 60枚程(2カ月分)も用意すれば良い。
- 記入は日記方式となります。上部欄外は、月日、 日数、天候、気温等を記入する。
- 当日の体重測定(毎日定時に測る)によって、前日との増減、生時との増加数値をgで記入する。
- オス、メスは♂・♀の記号が良い。
- 最下欄は、哺乳・離乳欄で時刻と内容を記入する。 子犬の数が3、4頭と少ない時は欄の枠幅を拡げ、 また、母犬に関する記載欄を大きくとる。
DL➡子犬成長表.pdf
子犬の体重は一日1回、できるだけ同じ時刻に測定、折れ線グラフにすると変化がよくわかります。
体重測定は、最低でも2週間は続ける必要があります。
子犬の体重は生まれて2~3日目に一度減少が見られますが、その後は毎日確実に増え続けていきます。
前日より減少したり、同じ体重が数日間続くようなら乳の飲み具合、元気や動きに変化がないかなど注意して観察する必要があります。
複数の子犬を見分ける方法としては、毛色が2色以上あるものならば、模様の特徴を観察ノートにできるだけわかりやすくメモすれば区別できます。
出来るなら区別できる番号札やリボンなどの見分けがつくまで装着が無難です。
気にかかっていた出産も無事に終り、目に見えて大きくなってゆく子犬達を眺める日々は繁殖の醍醐味といえます。 しかし、子犬が6、7匹までなら醍醐味と言えますが、10匹以上ともなるとその管理に追われて眺め楽しむゆとりの無い慌しい毎日となります。とは言え2ヶ月間は充実感に満ちた日々であることはたしかです。子犬の発育具合、健康状態は体重の変化で知ることが出来るので、毎日測ることが望ましいです。 そしてこの測定をもとにして、 繁殖日記をつけることも楽しみになります。基本は子犬の体重の推移を元にして、全期間を通じた体調のチェックと発育の記録で乳・補食・駆虫の状況が主ですが、折にふれて観察し書きとめておいた子犬達の行動が後日になって懐かしさなどが蘇ります。皆さんそれぞれ独自のものを作ってみてください。
子犬識別のやり方
産まれた一胎犬が全部で2~3匹であったり、或いは、色調、大小、性別、胸や肢端の白斑等の特徴でそれぞれの識別が出来る場合は良いのですが、5~6匹以上だと子犬を覚えるのが大変です。
子育て期間中の体重測定や哺乳に際しては識別用に番号をつけておくことがどうしても必要になります。
この輪ゴムの首輪で12~13日日頃までは充分に間に合いますが、子犬が大きくなると首にくい込んで不適となるので特徴を覚えたものは外してやり、まだ分かりにくい子犬は細いゴム紐や色違いのリボンにつけたり、分かりやすい色のリボンや番号を書いたリボンを首に付けたりしましょう。
わかりやすい色のマジックインクで背番号や目印を手足、頭、背中に書き入れて区別できるようにします。
あまりゆるいと、子犬が自分の前肢をつっこんでタスキをかけたような形にしたり、母犬が気にして外してしまったりする。
識別用ネックレスの作り方
材料は輪ゴムとテーピングテープ(ゴムテープなど)です。
- 輪ゴムは大小がありますが、サイズに合わせた輪ゴム
- テーピングテープは番号を記入するためであるが、子犬の首につけて1週間も経つと汚れて番号も読みにくくなるので例のようにいろいろ形を変えて切っておく。
狼爪(ろうそう)の除去
犬種によっては狼爪が全然発生しないこともあるようですが、犬種により前足はともかく後ろ足までで生えている事があります。
狼爪と呼んでいますが、この後肢の内側に発生している狼爪と呼ばれているものは狼指と呼ばなければならないでしょう。
爪だけでなく、 指が余分についているわけです。
従って除去は爪だけを切除するわけではないので、大なり小なり痛みも出血もあります。
場合によっては、ご丁寧に2本重なってついているものもあります。
このような時はどうしても傷口が大きくなり、指ですから細いながら骨も存在します。
骨の断端を短く切除しておかないと成長後出っ張ってくるので、爪は切りにくく、走ってる時に何かに引っ掛けてしまうと骨折もあり得ます。
狼爪損傷
右前足の狼爪
走ってる最中に何かに引っかけて狼爪が剥がれかける
なるべく目立たなくなるように短く切ることが肝心です。
生後、日数が経てば経つほど傷口が大きくなり、 成長後の切除は全身麻酔や、傷口の縫合も必要となって治癒までの日数も長くなります。
狼爪(後ろ)の切除の仕方なるべく事前に獣医師に相談しよう
- 生後なるべく早い時期(生まれてすぐ)に切除すれば、麻酔もいらず、治りも早いので出生当日に切るようにする。
- 助手の人に犬を保定してもらい、 消毒したのち外科バサミ又は毛刈りバサミで切る。
- 消毒は、直前に消毒アルコール綿で拭くのみで良い
- 切除は2回で切るが、1回目は狼指の付け根の1番くびれたところで切る。極く小さい指では皮だけで指骨がないことがある。指骨があるものでも力は不要で軽く切れる。
- 2回目は傷口に白く見える骨の断端があればこれをなるべく深く、さらうように切る。
- 切除後の消毒は、1回塗布するだけで良く、傷口の癒着状況を注意して見る程度で良い。
- 出血がある時は、傷口を上から軽く押さえて止血を待つ。
注)前肢の内側についている指は狼爪ではないので、切る必要はないが犬種によっては切除することがある。